どんな業界であっても、利益を出す経営者さんというのは、その感覚が独特で、そして鋭い。独特であるからこそ、他社・他店よりも利益を出すわけで、そのことは何となくでも理解できます。鋭いとは、一体どういうことなのか?

鋭いとは、利益を多く含む商品、飲食店なら料理を見つける、考え付くということではありません。端的に言うと、自分の顧客が欲しい、買おうと思うような商品を提供するまでの筋道が描けるということなんです。

もう少し詳しく書くと、先日、兵庫県尼崎市にある倉庫型ディスカウントスーパー「コストコ」に行って来ました。数軒の飲食店を経営する方に同行したのですが、見るもの全てに興味があるようで、その方のコメントそのものが経営のヒント満載でした。こうやって利益が出る料理を考え出すのかというのが手に取るように分かるわけです。

コストコには、飲食店に関係するものなら、精肉・鮮魚・青果などの生鮮品をはじめ、あらゆる食品が低価格で販売されています。惣菜やサンドイッチなどの加工品もありますが、ベーグルやバケット、チーズやスモークサーモン、生ハムやソーセージ、マフィンなどの素材に近い食品が数多く並んでいます。

その一個あたりの単価を割り出して、どんな料理に仕立て、一枚のお皿の上に盛り合わせるのは何がいいのか、それをいくらで売ればいいのか、わりと簡単にイメージして、「こんな感じなら、うちの店でよく売れるんだよ」なんて細かく説明してくれました。

それらの素材から、“どんな料理を作るか?”なら、調理の心得のある人であれば、きっと浮かんでくるでしょう。だけど、利益を出す経営者さんというのは、ちょっと違った角度から考えます。“自分のお店に来るお客さんなら”と、顧客層、もっと言うなら、一度の来店で使う金額を知った上で、どんな料理の内容がいいのかまで、ちゃんと計算できるのです。

料理の内容、その調理レベルや質という意味では、競合店には負けているかも知れなくても、自分のお店のお客さんに対しては、価格を含めて、どのような料理が受け入れられるのかを熟知しているんです。

繰り返しになりますが、“鋭い”というのは、最高においしい料理を作ることを目的にするのではなく、“この値段でこの料理ならお得ねと、自分のお店のお客さんが喜んでくれる”、その感覚が簡単に浮かんでくるということなんです。

競合店と比べて、最高の料理を提供することを目的にせず、お客さんの好みを熟知していて、喜んでもらえることを前提に考えていますから、リピート利用してもらえる、口コミで広がっていくというメリットまで同時に生んでいるのです。